家も住み始めて20年近く経つと色々な不具合が出てくる。
コンロ、ドア、通気口、漏水などなど、特に水回りは不具合発生度が高い。
お風呂のシャワーの温度調整がうまくできなくなった。
給湯器は去年交換したばかりだから、原因はシャワー栓だろうと見当はついた。
トリセツを引っ張り出し、そこに書いてある対処法を試みたが効果なし。
そもそもこの古いトリセツは、わかりにくい。
部品交換で何とかなるかと調べてみたが、結局シャワー栓そのものを交換すべきとの結論に至った。
水回りはちゃんとした方がいいだろうと思い専門業者を調べる。
「即日対応」「見積り無料」「作業費5,000円~」などの文字が躍る。
しかし、どうも頼む気になれない。
自分でできるんじゃないか?
そう思って調べると、専門家がブログで丁寧に写真付きで解説している。
一通り読むと、やれそうな気になってきた。
もう一つ見てみようと今度は投稿動画を見てみた。
自分と同じような状況で、新しくシャワー栓を買ってきて、これから自分で交換してみようという動画に見入った。
道具仕立て、ネジの回し方、失敗した姿、テープを巻く向き、水平の取り方、さっきブログに書いてあったことの実際がそこに展開され、情報が輪郭を帯びて立体的になっていく。
15分くらいのその動画をしっかり見終えた頃、「できそう」は「できる」に変わった。
更に動画のコメントに寄せられた疑問や注意点を読んだらもう完璧。
気分は水道業者である。
もう一度我が家のシャワー栓をよく見て、寸法を測り、先ほど見て学んだ手順をシミュレーションして、準備万端。
近くのホームセンターで新しい「サーモスタット混合水栓」(という名称であることも学んだ)と水漏れ防止の白テープを購入し、いざ取り付け。箱を開けて、中身を確認、どの部品も使うイメージができる。トリセツに目を通す。
予習の成果が生きて、書いてあることがすべてちゃんと理解できる。
そして、交換作業に。
順調に作業をこなしていく自分に酔いながら滞りなく進める。
事前の予習でイメージトレーニングできていたから、40分くらいで完了。
出来上がった姿をしばし眺めて、満足。
こうして無事シャワー栓の交換は終了した。
かつて専門業者に頼むしか考えられなかったこうした作業が素人にもできるようになったのは、SNSや動画での情報が役に立っていることは間違いないが、それ以上に機器そのものも取り付けが容易になっていることが大きいと思う。
部品も少なく、取り付けも容易、専門的な道具も要らない。
これは素人向けに変化したのではなく、専門家自体が求めた簡便さが結局素人でもできるようにしたということだろう。
そうなると専門家やプロの存在価値は何かということになる。
もっと難しい作業をこなせるか、仕上がりの美しさに違いが出るか、速くできるか、イレギュラーに応えられるか。
扱いやすい機器とそれをより後押しするようなネット情報が備わった現代、専門家は常に腕を磨いていないと不要になってしまう。
仕上がったサーモスタット混合水栓を見ながら、己の専門性も磨かねばいけないと考えた正月であった。
(いけ)