2015年11月26日(木)に開催された、一般社団法人日本マーケティングリサーチ協会(JMRA)主催のアニュアルカンファレンス2015のプログラム、Marketing Research 2.0プロジェクト発表枠のパネルディスカッションでパネリストとして登壇いたしました。
ファシリテーターは日産自動車の高橋様、他のパネリストは日本コカ・コーラの大嶋様、キリンの太田様でした。
ディスカッションでは、クライアントとリサーチ会社とのパートナーシップはどうあるべきか、またリサーチの未来についてお話しさせていただきました。
パネルディスカッションでの私(佐野良太)の発言要旨
「クライアントとリサーチ会社のパートナーシップというテーマであるが、大上段に振りかぶった『あるべき論』よりは、まずは小さなパートナーシップから始めることを提案したい。リサーチ産業の『装置産業化』が進んだ結果、両者のやり取りが調査スペック中心になり、調査の本当の課題がリサーチ会社からは見えにくくなっている。例えば、グループインタビューの対象者リクルートにしても、スクリーニングシートのYES,NO条件だけでは本当に調査課題にあった対象者を招集できるとは限らない。そのため、調査会社からは(課題に合った)ベストの提案や新しい提案をしにくい状況にある。より本質的な、議論の初期段階での課題の開示や共有がなされれば、リサーチャーも日々勉強して提案もするようになるだろうし、自分の提案が認められればやりがいも出てくる。また、調査の結果がどのように企業で取り扱われているのかがリサーチ会社からは見えないという問題もある。(商品の)コンセプト開発から商品の上市までには長い年月がかかるが、Ad Hocな調査をしていると調査会社は開発プロセスのポイントポイントでちょっとかかわるだけで自社の調査の結果がクライアントの中で実際にどのようにいかされたのかはわからない。もう少し長期的な関係で一連の調査を一緒に進めていって、結果もある程度共有されるようになれば、リサーチャーのモチベーションも上がるし、もっとこちらから提案をしよう、新しいことを勉強していこうという気持ちになる。結果としてお互いに高めあえるような関係になるのではないだろうか。」
「これからのリサーチ会社に求められるのはイノベーションや、新市場創造のお手伝いだと考えている。そのためには、ワークショップに代表される創造的な発想方法によって斬新なアイディアをたくさん紡ぎ出し、それをいかにうまく新しいビジネスモデルに落とし込んでいくのか、という思考形式の提案や方法論が求められる。リサーチの価値は新しい価値を創造することにもあると信じているので、今わかっていることをただ報告するだけでは足りない。リサーチ会社は新しい価値やビジネスモデルをクライアントと共に作っていけるパートナーになる必要がある。リサーチ会社は、心理学的社会学的な知見から、(新しい価値創造のための)『場』の設計や、新しいツールの開発、適切な『問い』を立てるチカラを持つエキスパートになることでクライアントの期待に応えられるパートナーになりうる。」